スマイスター|レインズへの期待

不動産業のIT化は業界別で見るといまだ進んでいないというのが現状です。
不動産ポータルサイトや、スマイスターのような一括査定サイトのように、サービスの一部としてIT化が浸透してきている部分は確かにあります。

しかし、不動産に関する業務そのものが効率化・省力化されるといった、劇的な変化をもたらすIT技術の活用はいまだなされていない、というのが業界にとっての共通認識であり課題といえるでしょう。
不動産の営業を担当する社員を例にとっても、人力による集客のための活動や顧客への情報提供で、全体の業務の3割以上の時間を費やしているとも言われており、不動産情報のやり取りにIT技術を導入することによって改善できる余地はまだあると見られています。

不動産情報を収集するシステムとして、不動産業者間で物件の情報を登録・閲覧できる「REINS(レインズ)」という仕組みがあるのはご存知でしょうか。

レインズとはReal Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)の略称であり、このレインズが保有している物件情報が、不動産ポータルサイトの情報源となっています。
しかしながら、この情報システムは会員のみがアクセスできることになっており、一般の顧客には公開されていません。

また、不動産業を営む各社の間で情報を共有できる仕組みにはなっているものの、いまだに各社それぞれが独自に抱える物件情報も存在していて、網羅性はいまだ十分ではないとも言えます。

レインズに含まれている情報の項目は、住所や価格帯、間取りなどの不動産広告に掲載されている程度のものとなっており、そこをソースとする不動産ポータルサイトも情報は限られていると言えるでしょう。
ですから、実際に顧客が複数店舗に足を運んで情報を収集したとしても、同じソースから同じような物件を一方的に紹介されてしまうということも多々起こってきます。

一方、アメリカでは「MLS(=Multiple Listing Services)」という、あらゆる物件情報をすべてデータ化したうえで、そのデータを共有、連携を可能にしたサービスがあります。

MLSは、オープン化された不動産情報のデータベースであり、情報量の豊富さやリアルタイム性はレインズと比べ物になりません。
このサービスには売り手と買い手、それぞれ直接アクセスすることが可能で、双方にそれぞれ不動産仲介業者がついたうえでの取引が行われています。

レインズは、あくまで不動産業者間のみで情報共有したシステムとなっていますので、顧客側からこういった情報にアクセスすることはできません。
不動産業者側との情報格差をなくし、オープン化していくことが今後の時代に発展していくためには必要なことと思われます。

アメリカのMLSと比べ、立ち遅れている感のある日本のレインズですが、それでも不動産テックの推進を考えた場合には極めて重要なシステムであると思います。

レインズの歴史をたどりますと、1990年に「財団法人首都圏不動産流通機構」として設立され、1997年に事業圏域を東日本に拡大して、「東日本不動産流通機構」と名称を変更しました。
2012年には公益財団法人の認定を受けています。
2016年において東日本全域で288万件の物件情報が新規に登録されており、物件情報検索などを含めた総アクセス数は4億5,652万件に達しています。

レインズの特徴として簡単にまとめますと、不動産業者間で物件情報を交換し、契約相手をスムースに見つけることができるというシステムになります。

物件情報を一か所のサイトに集約して、すべての不動産業者がレインズを閲覧できることで、「特定条件の物件を探す顧客」を抱えた不動産業者とマッチングすることを目的としています。

イメージとしては不動産ポータルサイトに近く、住所や駅、価格帯、面積、間取り、接道方向や駐車場の有無などといった希望条件を入力することで、条件に合致した物件を探すことが可能となっているのですが、前述したとおり、レインズを閲覧することができるのは宅地建物取引業者に限られているのです。

不動産業者間での情報流通を促進するために活用されているレインズですが、抱えている問題のひとつとして、登録情報の不足が挙げられます。

レインズには500もの項目が登録できるのですが、そのうちの登録必須項目は価格、専有面積、住所、間取り、取引形態の5項目のみになりま
す。

例えば、増改築の履歴などは物件にとって重要な情報にも関わらず、登録率は低かったりします。
リフォームの値段を左右するのに買主はその情報がわからない、といったようなこともあり、登録情報の不足はデメリットをもたらします。

また、レインズに登録されている情報が不透明である、と考えられている点も問題です。
購入希望者が直接情報を見られないということは、売却希望者の売る機会も損なっているということになり、適切ではないと考えられています。

不動産業者によっては、多くの利益を得ようとして不当に物件を囲い込んでいるケースもなかには存在し、しばしば問題となっていますがその状態は放置されています。
このように、不動産業界全体に情報の不透明性がある、と指摘されることもあるのです。

こういった問題の背景にはどちらも不動産業者以外の一般の人間がレインズを見られないことが原因として存在しています。
レインズの中身がわからないことが課題の原因となっているのですが、不動産業者は買い手と売り手の両方から手数料を受け取るビジネスであり、レインズが一般公開されれば不動産業者は買い手からは手数料を取れなくなるというジレンマも、オープン化が進まない要因になっていると考えられます。

他にも、不動産ポータルサイトの存在もレインズが一般に公開されない要因となっています。
不動産ポータルサイトは物件の掲載や、問い合わせによって利益を売るビジネスとなっていて、レインズが一般公開されると不動産ポータルサイトはその存在意義を失ってしまいます。

不動産テックを推進していくためには課題の多いレインズですが、徐々にではありますが機能の向上化の兆しが見え始めています。
2016年には物件の取引状況(ステータス)管理が導入されることになり、売り主は自分の物件がどういった販売状況なのかを確認する手段が整備されています。

アメリカのMLSと比べればまだまだですが、そのアメリカでもMLSを構築する以前の段階ではデータソースやデータフォーマットはバラバラで、最初に不動産情報を集約していく作業は非常に困難を極めたようです。

データの種類や量が膨大で、なおかつ重複したものもあり、情報の統一化には大変な労力が費やされました。
アメリカでも時間をかけて地道に構築して、課題を乗り越えた結果がMLSというシステムなのです。
日本においても不動産業の省力化や効率化、透明性を確保していくためにも、レインズの発展は時間が掛かろうとも成し遂げなければならないことと思います。