スマイスター|IT重説とは

不動産業は、人々の生活に必要な衣・食につづく「住」に直結した大変重要なサービスといえるのですが、IT化が非常に遅れている業界といわれているようです。

不動産取引を行うためのルールを定めた宅地建物取引業法(宅建業法)が成立したのは1952年という、戦後まだ7年しか経っていない、大変古い時代に制定されています。

当時の物件購入者の利益の保護と、公正な取引のためを考えて作られた宅建業法ですが、その時代にインターネットはもちろんパソコンも存在しません。
宅建業法は、多くの点で時代と合わなくなってしまっているという問題に直面しています。

また不動産売買の取引手順には膨大な量のステップがあり、ほとんどが人の手で行われているために簡略化することが難しいといわれています。

産業別のデジタル化指数でも、もっともデジタル化が遅れている産業に分類されてしまっているのです。
もちろん、不動産業者同士の情報ネットワークであるレインズや、不動産ポータルサイトなど一部局地的に進んでいるところはありますが、ビジネススタイルに大きな変化をもたらしたというものではありませんでした。

いまだに紙やFAXによって情報の記録・交換が、多くの不動産会社で行われているのです。
しかし、逆を言えばこれほど業務の効率化に改革の余地が残っている業界というのも他にないとも言えます。
不動産テックに期待されていることのひとつに、これら煩雑な業務の効率化があります。

これまで不動産取引における重要事項説明は、宅地建物取引士が対面して行うことが義務付けられていました。

しかし、2017年10月より開始された「IT重説」は、この宅建業法35条にもとづいて宅地建物取引士が行う重要事項説明を、Web会議システムなどを活用してオンラインで行うサービスです。
「IT重説」とはITを活用した重要事項説明を意味します。

Web会議システムでの対面からオンラインへの切り替えは、今後の新しい不動産取引を切り開く新しい試みといえます。
採用されたのは今のところ賃貸契約だけですが、大きな問題が無ければ売買契約にもいずれ拡大していくかと思われます。

IT重説のメリットとして、遠隔地から契約できるという点が挙げられます。
進学や就職などによって、現在住んでいる場所から遠く離れたところに家を借りるといった場合はよくあると思います。
そういったケースでは、これまで対面で重要事項説明が義務付けられていたため、契約を結ぶためには現地までわざわざ赴く必要があったのです。

交通費や移動時間など大きな負担をこうむってしまうところでしたが、IT重説であればオンラインで済ませることができるので、負担は大幅に軽減します。

来店が困難な事情のある契約者にも説明ができるという点も便利です。
例えば、病気やケガなど諸々の事情によって外出して宅地建物取引士のいる店舗まで行くことができない場合には、これまでであれば代理人を立てるなどの対応をしなければなりませんでした。

しかしIT重説であれば、自宅からパソコンやスマートフォン・タブレット端末を接続できますので、たとえ外出が難しくても宅地建物取引士は契約者に対して重要事項説明を行うことができます。

また、双方の日程調整が楽になることも大きな利点です。
対面して説明を受けなければならないとなると、仕事や家庭の事情によって店舗に行く時間がとれないといった方もいらっしゃるかもしれません。

日程調整をしなければならないというのも、うまくいかなければ負担となります。
その点IT重説であれば店舗に来店する必要がありませんので、自宅や職場などのインターネットの環境があればどこからでも説明を受けることができます。
日程調整も容易になりますので、不動産会社と契約者の双方にとって大変なメリットとなります。

そして、重要事項説明の内容がそのまま記録できるという点も便利です。
IT重説の場合であれば、説明時のやり取りは全てデータで残しておくことが可能となります。

つまり、説明の内容をさかのぼって確認することができますので、対面での説明の場合に起こりうる「言った・言わない」のトラブルを防止することにもなります。
データとしてやり取りを残しておけば、契約者も安心して説明を受けることができます。

では実際にIT重説に必要な機材は具体的にどういったものなのでしょうか。
国土交通省の実施マニュアルによりますと、IT重説を実施する際のIT環境として、「図面等の書類や、説明の内容について十分に理解できる程度に映像を視認することができて、なおかつ、お互いが発する音声をはっきりと聞き取ることができて、お互いがやりとりできる環境であること」と要約できます。

詳しくは宅建業法の第三十五条第一項関係に定められています。
IT重説に必要な機材としては、インターネットに接続できるパソコンやスマートフォン・タブレットなどの端末と、音声のやり取りに不都合のない音質のマイクスピーカーやヘッドセットのみとなります。

カメラはある程度の解像度を持ったものが端末に付属していますから、そのまま使って構いません。
特別に高価な機材なども必要なく、既存の端末を使用できることもIT重説の利点です。

IT重説の実施の流れとしましては、まず宅地建物取引士が記名押印した重要事項説明書と、説明に必要なその他資料を契約者側に事前に送付しておく必要があります。
IT重説の実施の際は、それらの資料が契約者側に届いているかまず確認して、IT重説実施に相応しいインターネット・機材環境かを確認します。

確認後、はじめにIT重説実施への同意をとって、Web会議システムなどのツールへ接続します。
宅地建物取引士は相手方に取引士証を提示して、契約者にカメラ画面にて取引士証の顔や氏名、登録番号などを確認してもらえばいよいよ重要事項説明の開始となります。

IT重説のような効率化のための新しい取り組みは、今後法律の改正とともに進められることが望まれていると思います。
これも立派な不動産テックといえますが、まだまだIT化で省力化できそうな部分は多く残っています。

IT重説は業界にとっては一見画期的なようですが、すでにできる環境で、できる仕組みを整えただけと言えないこともありません。
他の業界や海外では当たり前といえばそれまでですが、古い法律の残る日本の不動産業では大きな一歩といえそうです。